2020年1月8日水曜日

あべのハルカス美術館「カラヴァッジョ展」を観て

以前から楽しみにしていた、カラヴァッジョ展を観に行きました。出品点数が全体で
約40点、そのうちカラヴァッジョ本人の作品が約10点と、数は多くはないのですが、
各作品に「テルマエ・ロマエ」で有名な漫画家ヤマザキマリのイラストや、分かり
やすい解説が添えてあり、ところどころに設置されている、彼を巡る人物相関図の
パネル展示も充実していて、彼の画業の背景や作品世界を十分に味わうことが
出来ました。

この展覧会を観て私がまず知ったのは、カラヴァッジョがたぐいまれな画才を有し
ながら奔放な性格で、短い人生の晩年にはとうとう殺人を犯して逃走するという
スキャンダルを起こし、そしてその自らが蒔いた種による過酷な体験が、かえって
彼の画境を深めるに至る、その複雑な人生模様です。

しかし彼の絵画は、そのような血塗られた人生にも関わらず美しく、いやその波乱
の人生に呼応するように、この画家の内面の揺れ動く情動を画面上に表出して、
観る者に感動を与えずには置きません。

彼のこのような絵画表現が生まれた背景には、彼の生きた当時のイタリアが、
カトリック改革運動の中心地として、宗教意識の高揚のために情熱的で劇的な
宗教画を求め、それに応えるために彼が、劇的な明暗の対比や、写実的で肉感的
な身体表現、訴えかけるような情動の表出という、独自の表現方法を生み出した
という経緯があります。

その絵画表現は当時としてはあまりにも革新的で、美術史上も彼をバロック絵画
の先駆者と見なす評価が定まっているようですし、本展の彼以外の絵画の大半
は、彼に影響を受けた画家たちの作品です。彼が晩年にイタリア南部に逃走した
こともあって、その絵画表現法の影響はこの地に広がり、彼の死後も、ますます
拡散して行ったようです。

また大阪展だけの出品作、「執筆する聖ヒエロニムス」を観ると、カラヴァッジョの
絵画の魅力は、上記のような様式だけではなく、たぐいまれな空間構成力や色彩
感覚によっても、裏打ちされていることが分かります。

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