2020年1月8日付け朝日新聞朝刊オピニオン面では、「多様性って何だ 快も不快も
分かち合う 」と題して、身体障害を持つ作家・乙武洋匡氏へのインタビュー記事が
掲載されています。その発言に私の心に響く箇所がありましたので、以下に記して
みます。
乙武氏は周知のように、22年前に「五体不満足」という本を著して、その本はベスト
セラーになりました。インタビュアーから、その著書が日本社会が障害者の存在を
再認識するきっかけになった、と水を向けられて、彼はしかしその影響には『功罪』
があったと応じます。その『罪』の部分とは、この本を通して人々が、『明るく元気
な乙武くん』を全障害者の代表と受け取って、障害者の抱える問題の多様性に顧慮
することなく、障害者問題の入り口で立ち止まってしまったこと、というのです。
さて、ここからが私が考えさせられた部分ですが、彼が滞在した経験から語るところ
によると、日本より障害者理解という意味で先進国と思われるイギリス、ロンドンで
は、例えばゲイのカップルに対して理解を示す人が8割いる反面、拒絶し、暴力を
振るう人もいる、ということです。それに対して日本では、遠巻きに眺めるだけで
決して暴力を振るうことはないけれど、そのカップルが人々に本当に受け入れられ
ている訳でもない、といいます。
更には、ロンドンはバリアフリーは進んでいないが、障害者が困っている時に手を
貸す健常者が普通にいて、その結果積極的に外出する障害者が多く存在し、他方
東京ではバリアフリーがかなり進んでいるが、障害者を手助けする健常者はあまり
見かけないので、障害者が外出することに困難を感じる場合が多い、というのです。
このインタビュー記事を読んで、私はこの国では、健常者と障害者が互いを理解
しようという意思が欠けていること、またマジョリティーの健常者が、表面的な部分
でのマイノリティーの障害者理解で事足りると考えていること、を知りました。
この問題は、何も障害者問題に限らず、現代の日本社会を広く覆う功利主義、事
なかれ主義、人間関係の疎外も、深く関わっていると感じられます。乙武氏という、
障害を持ちながら社会に積極的に関わろうとする人の発言を通して、日本人が
抱える現代の病がくっきりと浮かび上がったことに、感銘を受けました。
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