2019年5月27日月曜日

京都高島屋グランドホール「第48回日本伝統工芸近畿展」を観て

恒例の「日本伝統工芸近畿展」を観て来ました。

今回は、パンフレットの表紙やチケットにも使用されている、日本伝統工芸近畿賞
受賞の人形作品、桐塑布和紙貼「雲の上」にまず惹きつけられました。

今までの人形作品のイメージに比べて洗練されていて、手足の表情、仕草に
リズム感を伴った軽やかさ、動きがあり、あたかも雲の上を歩むような詩情溢れる
佇まいを呈しています。現代という時代の気分をまといながら、それでいて少し突き
抜けた気品を示している清新な作品だと感じました。

いつも重点的に観る染織系の作品では、染色作品で白地を多用した着物が目立ち、
表現として垢抜けした雰囲気を醸し出してはいますが、実際に着用する着物として
は耐久性の面で問題があるのではないかと、気がかりに思いました。

同じく染織系で、刺繍作品の出展数が増えていて、刺繍の多様な表現や表情を
味わうことが出来て、好ましく感じました。

織物の作品では、お馴染みの幾何学的な表現にも増して、織物という制約の中で
動きや造形的な面白さを現出した作品に、工夫の跡が感じられて、興味を持ちました。

会場脇に、出品陶芸家の盃で試飲したり、その盃の販売、更には盃を入れる織物、
あるいは刺繍を施した仕覆の販売コーナーを設けるといった、一般の人に比較的
価格が手ごろな工芸品の愛用を促す試みも定着して来て、一定の賑わいを見せて
いました。

既成の工業製品に比べて高価ではあっても、温もりや味わいのある工芸品を愛用
する楽しさを実際に体験してもらうことは、将来の伝統工芸の存続のためにも、少な
からず意味のあることだと、感じます。


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