2018年6月29日金曜日

是枝裕和監督作品「そして父になる」を観て

是枝監督の「万引き家族」が、今年度のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した
ことを記念してテレビ放映された、第66回同映画祭審査員賞受賞作「そして父になる」
を観ました。

今回の放映作品は、監督の特別編集によると名うたれていたので、公開時とどれほど
相違があるかは分かりません。ただ、当時の映画評等で、おおよそのあらすじは知って
いたのですが、実際に観てみてラストがとても印象的でした。

エリート建築家野々宮良多、みどり夫婦の一人っ子、6歳の慶多と、電気店を営む
斎木雄大、ゆかりの長男琉晴が、二人が生まれた病院で取り違えられていたことから
始まる物語は、一見何不自由ないように見える野々宮家の父子関係の希薄さを
明らかにします。

他方決して裕福とは言えない斎木家の子供たちは、本気で向き合ってくれる両親の
影響もあって、生き生きと育っています。子供にとっては、果たしてどちらが幸せか?

斎木夫婦の言動で、同じく自営業の私が面白く感じたのは、夫婦が良多の面前で
取り違えをした病院に請求する慰謝料のことを、赤裸々に語った部分。それを聞いた
良多が、斎木家が金に困っていると勘ぐるのですが、私の経験上も商売人という
ものは、内輪で金の話しをあけすけにするようでいて、その実内心は家族の絆を
大切に感じているというニュアンスを巧みに表現していて、是枝監督の細部に至る
人間観察力を感じました。

話しをラストに戻すと、ある意味で図式化された野々宮家と斎木家の親子関係の
描写の後で、それでもそれぞれの家庭の親子の愛情と絆の形があり、個々の
家族がかけがえのないものであることを、ひらめきのように思い起こさせてくれる、
唐突ではあるが深い余韻を残すラストが、秀逸であると感じました。

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