2018年6月12日火曜日

「紀元會貯金誓約書」のこと

先日、町内の私の父より少し若い世代の方が私たちの店をのぞかれ、これをちょっと
見てくれと、古い冊子を私にお示しになりました。

手に取って見てみると、白地の和紙を綴じた冊子の中央に、「紀元會貯金誓約書」と
黒々と墨書がされていて、昭和16年(1941年)5月と年号も添えられていました。

その方の語られるところによると、部屋を整理していて偶然にこの冊子を見つけたと
いうことで、何でも昭和16年は第二次世界大戦の開戦の年で、当時臨戦態勢下の
わが国で国民に対して、戦争に備えた貯金が奨励されていたそうで、西隣の町内の
有力な方が音頭を取って、私たちの町内共々有志の者が集まって、共同で貯金を
しようということに決まったらしいのです。

その方のお父さんもその企てに参加され、私の祖父も参加したので、縁のある孫の
私にわざわざ見せに来て下さった、ということでした。

貴重なものをお借りして目を通すと、最初にこの時勢に敢えて共同貯金を行う趣意が
記され、続いて各自が拠出する金額、貯金の預け先、預ける期間等の詳細、また、
貯蓄期間中には子孫に至るまで、何人も決して貯金を引き出してはならないという、
この会の誓約も記述されていました。

その内容は、各人がそれぞれ金10円を出し合い、郵便局に400年間預けると、期間
終了後には当時の利率から計算して1570,344円になるという壮大なもので、面白い
ことにその頃のお金の価値も物価という形で列記され、それによると、当時白米が
1斗当たり4円65銭、白砂糖が1斤30銭、鶏卵が100匁48銭、生糸が100斤1,350円、
純金が1匁14円60銭などです。当時の貨幣価値が彷彿とされます。

冊子の最後には参加者名が自筆で署名され、捺印もされていて、私はその中に、懐か
しい祖父の名前も見つけました。

この冊子を目にして、70年以上の昔と現在の私たちが、決して断絶しているのではなく
地続きであることを、今更ながら感じさせられました。

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