2018年6月1日金曜日

鷲田清一「折々のことば」1120を読んで

2018年5月26日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1120では
作家津村記久子との共著『大阪的』から、大阪語の作法の妙について、編集者・
ライターの江弘毅の次のことばが取り上げられています。

 「ツッコミ」は「拾う」であり、その後のコミュニケーションに接続すること。ぴしゃりと
 一言で「これが正解だ」と示すのではない。

何も大阪に限らず関西の言葉のやり取りには、こういう作法が欠かせないと思います。
まず端的に表されているのは、漫才コンビの「ボケ」と「ツッコミ」です。

ボケ役がとぼけたことを言うと、ツッコミ役がたしなめたり、チャチャを入れたり、混ぜ
返したりする、お客さんの爆笑を誘って、またボケ役がとぼけたことを言う・・・という
具合に、二人の掛け合いで漫才はリズム良く進行します。

漫才コンビのどちらが話しを主導しているかというと、それはコンビによっても違い、
またボケ役とツッコミ役が入れ代わる場合もあるようですが、要するにそれぞれの
キャラクターのアピール度や絡みの話芸の特色から、お客さんに一番受ける
進行方法を選択するということなのでしょう。

ちなみに、一人で場を盛り上げる話芸の達人明石家さんまは、会場の一般人に
突っ込みを入れてその人の面白いところを引き出し、一般人に自分を突っ込ませたり、
自分で自分に突っ込んだり、ツッコミ役とボケ役を一人でこなす八面六臂の活躍で、
いつも感心させられます。

さて笑いのプロとは全然濃度が違いますが、私たちも会話をする時には往々に、
「ボケ」と「ツッコミ」の話しのやり取りの呼吸を求めているように感じます。例えば、
何気ない話の中にわざと冗談やとぼけた要素を入れて、相手から突っ込まれること
を期待するような・・・

私はこれまでそのような話し方の態度は、自分が相手に面白いことを言って受けたい
ためと、単純に考えていましたが、上記のことばを読んで、それは会話がスムーズに
進行するように相手を思いやる態度でもあると気づかされ、納得させられる思いが
しました。

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