2018年5月2日水曜日

京都国際写真祭、リウ・ボーリンと宮崎いず美の写真展を観て

今回は同写真祭の企画の内、祇園の大和大路界隈の二つの写真展を観て来ました。

まずリウ・ボーリンの展覧会は、「Liu Bolin x Ruinart」と題し、世界最古のシャンパー
ニュ・メゾンとコラボレートして、同メゾンと彼らが作り出すシャンパーニュの魅力を、
ボーリン独自の手法で写し取っています。

私が彼の写真作品を観るのは恐らく今回が初めてですが、最初に驚かされたのはその
独特の制作方法で、つまり彼が主題を表現するために選んだ風景、場所などの前景に、
その風景、場所に溶け込むように全身にペインティングを施した写真家自身、あるいは
縁の人物を佇ませて、まるで場と人間が渾然一体となったような写真を撮ることです。

そのような手法の写真で、彼がルナールという魅力的な対象から浮かび上がらせた
のは、ブドウの栽培から始まる自然との共生、歴史と風格をたたえるメゾンの現場
から立ちあがって来る、スタッフのワイン造りへのひたむきさ、品格、矜持などであると、
感じました。

実際に撮影に使われたペインティングされた衣装の展示、撮影風景を記録する映像
の上映なども、彼の作品制作の過程が体感出来て、より写真作品への理解が深まると
感じました。

会場屋上の、ルナールのシャンパーニュを手軽に味わえるコーナーはまず、鴨川周辺
を見下ろせるロケーションが素晴らしく、私はワインは注文しませんでしたが、かなりの
誘惑に駆られました。

次に訪れたのは、「UP to ME」と題する宮崎いず美の写真展。そんなに広いスペース
ではありませんが、モダンなビル一棟を写真とインスタレーションで埋めています。

彼女の作品を観るのも初めてですが、宮崎自らが演じる幼さの残るおかっぱ頭の
無表情の女性(女の子)が、奇抜でユニークな設定の合成写真の中で、悪戯っぽく、
大胆、あるいは少しとぼけた仕草でポーズを取る、正に宮崎ワールド全開の楽しい
展覧会です。

作品の観せ方も趣向を凝らし、特にインスタレーション作品の、観る者自身が身を
かがめて、設置された穴から上部に顔を覗かせると、そこは青一色の空間で、雲を
思わせる飾り物も設えられていて、まるで空に浮かんでいるような感覚を味わえる
作品は、彼女の世界観を実際に体感するような趣きがありました。

更には、その穴を覗き込んだ観客の首から下の身体が、その作品を少し離れた場所
から観ている観客の鑑賞対象になっているという入り組んだ複雑さも、独特の感興を
呼び起こしてくれました。

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