2018年5月16日水曜日

京都国際写真祭、深瀬昌久とロミュアル・ハズメの写真展を観て

今回は、昨年も訪れた誉田屋源兵衛会場で、深瀬昌久「遊戯」とロミュアル・ハズメ
「ポルト・ノポへの路上で」の2つの写真展を、観て来ました。

まず竹院の間で開催されている深瀬昌久の写真展。彼は25年前の不幸な事故で
やむなく写真家としての活動を休止、そのまま回復することなく20年前に亡くなった
ということですが、その実験的な作品が近年国際的にも注目されているそうです。

実際に観てみると、今写真祭のチラシの表紙にもなっている、猫の顔のクローズ
アップ写真にピンと糸が張り巡らされたものを更に写真に撮ったインパクトの強い
印象的な作品など、現在から25年以上前に発表された写真とは思えない、前衛的
でスタイリッシュな作品が並んでいます。

今展にも出品されている、二重露光を用いたカラスの写真シリーズなどが代表作
ということですが、私は奥のスペースに展示されている、「私景」という枠でくくられる
写真家自身が登場する「プクプク」「ヒビワレ」「ベロベロ」などのシリーズが一番
印象に残りました。

これらの作品は、この写真家に想起される風景や、心象と重なる路面のヒビなどに
自身のポートレートをダブらせ、その上にコメント、イラストなども描き込んで、彼の
内面を写真として提示するものや、あるいは、風呂の水面に顔の半分までつけて
あぶくを立てる姿を写したセルフポートレート、更には彼と知人が顔を近づけ、舌で
互いをなめ合う様子を写すポートレートなど、一見人を食ったような作品などですが、
それぞれに写真家が自分自身を表現しようとする意図が明確に示されていて、その
茶目っ気と実験性を十分に楽しむことが出来ました。

次に黒蔵で開催されているロミュアル・ハズメの写真展。まず会場1階のこの写真家
の祖国、アフリカ、ペナン共和国の現実をものを通して表現するシリーズでは、この
国の庶民が生活の必要から愛用するポリタンク、大きなガラス瓶や中古のスクーター
を題材に選んで写真を撮るこことによって、彼らの虐げられた歴史、今尚続く厳しい
生活を見事に描き出しています。

会場2階以上は、逆に祭祀を通して彼らの文化の豊かさを表現するシリーズ。
ユニークなオブジェも用いて、観る者をアフリカのエキゾチックさに誘ってくれます。

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