2018年5月28日月曜日

京都高島屋グランドホール「第47回日本伝統工芸近畿展」を観て

高島屋で恒例の「日本伝統工芸近畿展」を観て来ました。例によって染織を中心に
観ながら、会場を回りました。会期が約1週間、そのうちの日曜日ということもあって、
会場には多くの人出があり、京都ではまだまだ工芸への関心が高いと感じました。

今展では、私は受賞作2点の先染めの紬織着物に注目しました。新人奨励賞の
大塚恵梨香「水のハーモニー」は、紬らしいシンプルな生成りの地色に、藍色を
中心の淡い縦縞、アクセントを成すもう少し濃い藍色が、斜めの点線の繰り返しで
ジグザグ模様を描き出して、あっさりとした表情の中にも、すがすがしい詩情を醸し
出しています。目を凝らすと、藍色の縦縞の間に、ほのかな黄色い線が織り込まれて
いて、微妙なニュアンスを生み出していることに気づかされます。そのような隠れた
技巧に、作者の意気込みと熱意を感じました。

京都新聞賞の津田昭子「花の交響」は、おなじみのベテラン作家の作品、これも縦縞
の着物ですが、地元に産する多彩な植物の天然染料を使用し、縞の色使いを部分に
よって変えてあるのは無論、身頃の染め分け、縞の間に織り込まれた微かな模様が
心地よい表情を生み出し、一見シンプルでありながら、豊饒な雰囲気を感じさせる
作品になっています。それぞれの作品が、手織りならではのぬくもりのある微妙な
ニュアンスを体現していて、手仕事の美を再確認する思いがしました。

いつも駆け足で会場を後にするので、これが初めての試みであるのかは定かでは
ありませんが、今回設けられていることに気づいた展示販売のコーナーでは、
出品作家が制作した陶器、ガラスなどの盃、ぐい吞みなどが販売され、希望があれば
好みの盃で日本酒を試飲することが出来るという企画もあり、またそれらの盃などを
携帯するための同じく出品染織作家、刺繍作家の仕覆なども販売されていて、
なんとかして伝統工芸品を一般の人に身近に使って貰おうという、意図の試行が企て
られていることに、主催団体の工芸の火を消さないための熱意と、危機感を見る思い
がしました。

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