2017年3月22日水曜日

デミアン・チャゼル監督映画「ラ・ラ・ランド」を観て

監督賞、主演女優賞を始め、アカデミー賞を6部門で受賞した、今話題のミュージカル
映画です。

私はミュージカル映画をあまり多く観ている方ではないので、どの場面が過去のどの
作品のオマージュか、ということはよくわかりませんが、この映画の冒頭、アメリカの
広大なハイウェイで渋滞したおびただしい自動車の中から、突然ドライバーや乗り組ん
でいた色々な人種の人々が飛び出して来て、それぞれが個性を主張しながら、全体
として統制の取れた力強く、ダイナミックなダンスを披露するシーンを観た途端、間違い
なくこの作品は秀作であると、予感しました。

ストーリーは極めてシンプル、成功を夢見る男女が惹かれ合い、すれ違い、そして夢を
叶えながらも余韻の残るラストが待っている・・・。しかし承知のように、話の筋を追う
のが目的の映画ではなくて、主演俳優の魅力、音楽、歌唱、映像の美しさと素晴らしさ
を、それらを申し分なく引き立てる絶妙の演出と共に観る作品なので、観終ってすぐに
もう一度観たいと思いました。

これも映画によくある展開なのですが、売れない女優、あるいは女優の卵が成功の
階段を駆け上がって行く様子を、その映画に主演出来るだけの評価を得ている気鋭の
女優がみずみずしく演じる、この複雑な入れ子状の演出も、作品に美しい万華鏡を
覗き込むようなきらめきを添えるのに、一役買っているように感じました。

ラストの、セブのジャズバーを偶然夫と共に訪れたミアを前にして、彼が二人にとって
忘れられないメロディーをピアノで奏でるシーン。そこで走馬燈のように流れる、回想、
願望の入り混じったイマジネーションに富む切れ切れの映像には、二人の万感の思いが
凝縮されていて、人生の哀感の絶妙な表現に、胸が詰まりました。

映画というものが、観客にとって日々の生活の憂いをしばし忘れ去らせてくれる、白昼夢
の無限製造装置であることを、久々に思い出させてくれる、素晴らしい作品であると、
感じました。

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