2017年3月18日土曜日

連続講座第4回「プロフェッショナルに聞く!~文化庁移転と文化芸術の未来~」を聴講して

3月17日に京都芸術センター大広間で開催された、上記講座を聴講して来ました。

この講座は、文化庁の京都移転の決定に伴い、京都市主催のもと、主催者の説明に
よると、日本全体における京都の価値、京都が引き受けるべき役割や、文化庁を
「関西」として迎えるという視点を明らかにするなど、文化庁京都移転の意義や効果に
ついて検証するために企画されたものです。

第4回の今回は、イギリス出身で文化財の修理、施工を担う(株)小西美術工藝社代表
取締役社長デービッド・アトキンソン氏、江戸中期の京都を代表する儒者皆川淇園の
学問所址を保存し、文化芸術による<知>を再生するための新たな学問、文化サロン
を運営する公益財団法人有斐斎弘道会代表理事兼館長濱崎加奈子氏を出演者に
迎えて開催されました。

まず京都芸術センター(旧明倫小学校)は、美術展を観るために数回訪れたことがあり
ますが、今回の会場の大広間に入るのは初めてで、その風格のある堂々とした造りに、
さすがに旧番組小学校の施設と、感心させられました。

今回の講座は、出演者が元離宮二条城の観光施設としての活性化に係わるご両人と
いうこともあって、多くの観光客を迎える場としての二条城の在り方、という所から始まり
ました。

アトキンソン氏いわく、彼が係わる以前の二条城はただ漫然と箱としての建物を観客に
提示するだけで、現代の観光客のニーズに答えていなかった。今日にあっては、特に
外国人観光客の求める歴史的建造物に対する観光施設像は、その建物が実際に機能
していた時代の姿を、歴史解説と合わせて見せることである。つまり体験としての観光
というものが求められている、というものでした。

京都の歴史的建造物の見せ方が、このような状態に陥っている背景には、行政も含め、
私たち住民の伝統文化に対する考え方が、何か自分たちからかけ離れたよそ事に
対するかのようになっているからで、文化をもっと身近なものとしてとらえることが大切
という話がありました。

また濱崎氏も、失われかけた弘道館の跡地を保存、維持することを通して、伝統文化を
守る事の大切さを実感した様子を、実例と共に語られました。

ここまでの話には、観光という視点からの行政への提言という側面も色濃く、また歴史や
文化を経済的な意味での観光資源とだけとらえる論法に多少違和感もありましたが、
話が終盤の文化庁の京都移転の意義というところに至り、私にとっても、興味深いものと
なって来ました。

私が興味を感じたのは、文化庁が京都に移るということは、国家権力の目がもっと身近に
我々を監視することにもなり、そうなれば過去の遺産に依存しているような、今日の地場の
伝統産業界の中途半端な在り方は、厳しい批判に晒されることになる、伝統産業製品にも
さらに本物の価値が求められることになる、という見解です。

伝統産業界の現状は厳しく、その端くれにいる私たちの店も、御多分に漏れず荒波に
晒されていますが、文化の一端を担うという矜持を失うことなく、お客さまに満足を与える
品質の良い商品を、常に提供出来るように努力を続けたいと、改めて感じました。

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