2019年7月1日月曜日

細見美術館「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」を観て

インドの独立系の小さな出版社で、独創的な美しい本を制作することで世界的に
注目されているタラブックスにについては、私は今までまったく知りませんでしたが、
紹介記事で見たその活動に興味を感じ、本展に足を運ぶことにしました。

会場に入ってすぐ目に飛び込んで来る絵本の原画は、色彩も美しく、伸びやかで
創造性に満ち、思わず引き込まれてしまいました。

これらの原画は、伝承や民話をもとに、インドの少数民族の世俗画家とタラブックス
の担当者とが検討を重ねることによって生み出されるということで、それらの原画を
使って、手すき和紙にシルクスクリーンの技法で摺り上げられた上質な絵本が、
制作されているということです。

つまり、そうして出来上がった絵本は、絵本としての品質が優れているだけでは
なく、少数民族の中の伝統的な手仕事に携わる人々に新たな仕事を提供し、その
出版物によってインドの民衆のアイデンティティーをも育むと共に、広く世界に
この国の文化を発信することにもつながる、ということです。

タラブックスの創業者の一人、ギータ・ウォルフ代表は、ドイツで文学を研究し、
帰国後この出版社を立ち上げたということで、グローバル化の中で、いかにして
インドという地域の文化的魅力を世界に伝えていくか、ということに腐心している
ように感じられました。

そのほかにもタラブックスでは、児童教育や社会問題をテーマとする良質な本が
出版され、それぞれのテーマに相応しい、斬新な書籍の形状や装幀が試みられて
いるようです。

また、この出版社の斬新で先駆的な出版方針を堅持すべく、少数精鋭のスタッフ
が、互いに話し合い、また生活のアフターケアまでも考慮した、民主的な運営が
行われたいるようです。

二十一世紀に相応しい、芸術的企業経営であると、感じました。

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