2019年7月8日月曜日

京都文化博物館「横山華山展」を観て

横山華山は江戸時代後期の京都の絵師で、幼少期より曽我蕭白の影響を受け
絵を学び、岸駒に入門、呉春に私淑するなど多彩な画法を身に付け、特定の流派
には属さず多様な画題の絵を描いて人気があり、夏目漱石、岡倉天心に高く評価
されるなど、明治、大正期までよく知られた存在であったようです。

また海外の蒐集家にも評価され、欧米の美術館に名品が多数所蔵されているそう
で、今展でもボストン美術館、大英博物館の収蔵品が数点出品されていました。

しかしそれ以降、我が国では忘れ去られた存在になり、私もこの展覧会の開催に
よって初めてその名を知りましたが、今日に至っているということでした。

さて実際に作品を観ると、画法や画題の多様さとそれぞれの完成度の高さに、
改めて驚かされました。また全体として形にとらわれない自由さ伸びやかさがあり、
その結果と思われる近代性も感じ取れました。

その中でも私の目を惹いた作品は、まず『唐子図屏風』、この屏風は金箔を敷き
詰めた華やかで豪華な下地の上に、鮮やかな色の衣装をまとった唐子たちが無心
に遊ぶ様子が描かれ、何とも言えない上品でたおやかな気分を現出しています。
大丸の初代オーナーが一時所蔵していたことも、うなずけます。

次に明治天皇の御遺物として泉涌寺に下賜された『桃錦雉・蕣花猫図』、一対の
掛け軸の右側には、左下方に枝垂れるピンクの花をつけた桃の枝の上方に、
鮮やかな色彩の錦雉鳥を配し、左側には左下方の二匹の猫にかぶさるように
右上方に伸びる、鮮やかな青い花を咲かせた朝顔の葉と蔓を配して、色彩と構図
の対比の妙を見事に作り出しています。洗練された美を紡ぎ出した名品です。

最後に本展の一つの呼び物でもある、上下巻合わせて約30メートルの大作、『祇園
祭礼図巻』は圧巻でした。この絵巻は、華山存命の時代の祇園祭の様子を、綿密な
取材に基づいて細部に至るまで描写し、当時の祭りの一部始終を生き生きと蘇ら
せています。また縦に長い形状で、本来横に長い絵巻物に描き込むには不向きな
山鉾という題材を、華山は山鉾の上下を大胆にトリミングすることによって、見事に
均整の取れた作品として描き出しています。このあたりにも、彼の近代的な感覚が
感じ取れます。

私たちが「町つくり委員会」で復活を応援する、鷹山のけんそう品の再現のためにも、
この絵巻物の鷹山の描写は大変役に立ったということで、綿密に描かれた絵画は、
時代によっては記録としても有用であることが、改めて認識されたということです。

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