横山華山は江戸時代後期の京都の絵師で、幼少期より曽我蕭白の影響を受け
絵を学び、岸駒に入門、呉春に私淑するなど多彩な画法を身に付け、特定の流派
には属さず多様な画題の絵を描いて人気があり、夏目漱石、岡倉天心に高く評価
されるなど、明治、大正期までよく知られた存在であったようです。
また海外の蒐集家にも評価され、欧米の美術館に名品が多数所蔵されているそう
で、今展でもボストン美術館、大英博物館の収蔵品が数点出品されていました。
しかしそれ以降、我が国では忘れ去られた存在になり、私もこの展覧会の開催に
よって初めてその名を知りましたが、今日に至っているということでした。
さて実際に作品を観ると、画法や画題の多様さとそれぞれの完成度の高さに、
改めて驚かされました。また全体として形にとらわれない自由さ伸びやかさがあり、
その結果と思われる近代性も感じ取れました。
その中でも私の目を惹いた作品は、まず『唐子図屏風』、この屏風は金箔を敷き
詰めた華やかで豪華な下地の上に、鮮やかな色の衣装をまとった唐子たちが無心
に遊ぶ様子が描かれ、何とも言えない上品でたおやかな気分を現出しています。
大丸の初代オーナーが一時所蔵していたことも、うなずけます。
次に明治天皇の御遺物として泉涌寺に下賜された『桃錦雉・蕣花猫図』、一対の
掛け軸の右側には、左下方に枝垂れるピンクの花をつけた桃の枝の上方に、
鮮やかな色彩の錦雉鳥を配し、左側には左下方の二匹の猫にかぶさるように
右上方に伸びる、鮮やかな青い花を咲かせた朝顔の葉と蔓を配して、色彩と構図
の対比の妙を見事に作り出しています。洗練された美を紡ぎ出した名品です。
最後に本展の一つの呼び物でもある、上下巻合わせて約30メートルの大作、『祇園
祭礼図巻』は圧巻でした。この絵巻は、華山存命の時代の祇園祭の様子を、綿密な
取材に基づいて細部に至るまで描写し、当時の祭りの一部始終を生き生きと蘇ら
せています。また縦に長い形状で、本来横に長い絵巻物に描き込むには不向きな
山鉾という題材を、華山は山鉾の上下を大胆にトリミングすることによって、見事に
均整の取れた作品として描き出しています。このあたりにも、彼の近代的な感覚が
感じ取れます。
私たちが「町つくり委員会」で復活を応援する、鷹山のけんそう品の再現のためにも、
この絵巻物の鷹山の描写は大変役に立ったということで、綿密に描かれた絵画は、
時代によっては記録としても有用であることが、改めて認識されたということです。
0 件のコメント:
コメントを投稿