2019年1月23日水曜日

染、清流館「中井貞次の世界 イメージを染める」を観て

日展、日本現代工芸美術展で長く活躍する有力染色作家の、まとまった作品による
回顧展です。

まず染、清流館は、呉服問屋街の室町四条にある、明倫ビル6階に設けられた珍しい
染色作品専門の美術館で、私は仕事柄しょっちう前を通っていますが中に入ったこと
はなく、一度訪れてみたいと思っていました。

今回日展でなじみのこのベテラン作家の展覧会があると聞き、早速訪ねてみました。

中井氏の作品は、火山、巨木といった自然界の膨大なエネルギーを発散、あるいは
内に秘めたような存在感のある対象を、至近距離から鷲づかみにしたような表現手法
に特色があり、藍を中心とする抑えた重厚な色調と、ろうけつ染めの大づかみで大胆な
色面処理で、力強い躍動感、溢れる生命力を描き出しています。

作家自身も目指す方向性として語っているように、染色技法でしか表現することの
出来ない作品世界が、この畳敷きの落ち着いた展示場に並ぶ作品群によって、見事
に現出されているように感じました。

私の職業の白生地屋という視点から、作品に使われている生地について触れると、
今展の出品作は、浜紬など絹生地を使用した初期の数点を除き、大半は麻生地が
用いられています。

この作家の作風から見て、浜紬の温かみのある質感や美しい発色も決して悪くは
ありませんが、作家自身がそれ以降、藍の色彩の深みを引き出すためにも、麻生地
を主に用いる選択をしたのだと、感じました。

染色作家の作風、表現技法の違いによる、素材としての生地の選択の可能性に
ついても、考えさせられる展覧会でした。

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