2019年1月11日金曜日

前田安正「ことばのたまゆら 闇は外へ開く力に」を読んで

2018年12月12日付け朝日新聞夕刊「ことばのたまゆら」では、「闇は外へ開く力に」
と題して、朝日新聞メディアプロダクション校閲事業部長の筆者が、建築家・高橋
正治氏の「家の中には闇が必要だ」という言葉から語り起こし、かつての家にあった
仏間や納戸、押し入れといった闇の世界でもある「異なる空間」が、人が悩みを抱え
た時に逃げ場にもなり、またあるいは闇の向こう側に光があることを感じ取り、自ら
に向き合うことが出来る空間でもあった、ということを紹介しています。

私は古い町家で仕事など大半の時間を過ごし、おまけに照明も旧式のものを使って
いるので、日中でも雨降り、曇り空で日差しの少ない日には部屋の四隅が薄暗く、
また夕方以降には家の敷地内でも、渡り廊下や中庭など闇に沈む箇所があること
に慣れています。

他方リビングのスペースは、比較的最近フローリングで洋風に改修した部分なので、
いわゆる伝統的な和風と現代的洋風の混在した中で、暮らしていることになります。
それ故に日々そのコントラストを味わっているはずですが、鈍感なのかあまり違和感
を感じません。

それでも照明の明るいリビングで夕食から食後の時間を過ごし、就寝のために町家
スペースに移動すると、部屋の暗さが身に沁み、寝間に入っても寝入りばななど、
古い木造建築特有の軋み音にハッとさせられることもあります。

上記の「異なる空間」といったことは全く意識したこともありませんが、このような現代
の住宅構造からは特異な家屋で生活し、なおかつそのような空間に安らぎを感じて
いるということは、とりもなおさず闇の空間を多く含む住居に親近性を感じていること
になるのでしょう。

もっとも、子供の頃にはこの家に住んでいなかったので何とも言えませんが、もし幼い
頃にここで暮らしていたら、闇はもっと私の人格形成に作用していたかも知れません。

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