2018年9月26日水曜日

荻野慎階著「古生物学者、妖怪を掘る」を読んで

古生物学者と妖怪という、一見ミスマッチな取り合わせが面白く感じられて、本書を
手に取りました。

科学的な手法で物の怪や妖怪の正体を探るとでも言うのでしょう。でも、著者の
実際の探求の道筋や結論は説得力があり、多くの点で納得させられる思いが
しました。

怪異や妖怪の正体の多くが、自然現象や古代の生物の化石など、昔の人々に
とって人知の及ばない不可解なものとみなされた現象や物体のことで、そのように
受け止めることで、人々は恐ろしいなりに心の均衡を得ていたのかも知れません。

しかしそのもの自体の正体が分からないなりに人々の観察眼は鋭く、後々の
科学的思考法の萌芽を見る思いがします。昔の人もなかなか侮るなかれ、と感じ
ました。

著者の推論の中で私にとって特に興味深かったのは、古代のゾウの頭部の化石
が一つ目の入道とみなされただろうことと、クジラ、イルカなどの海棲動物の骨格
化石が一本足の妖怪とみなされたのではないか、という部分でした。

目の前に現実にあるものが正体不明で、雲をつかむような存在である時に人は、
一体そこから何を想像するのか、私たちがUFOや宇宙人を思い描くのにも通じる、
人間の空想力に思いが及びました。

さて古生物学者が化石を復元する時にも、このような想像力がものを言うことを
知って、科学というものの根源には夢を見る力が大きく働いていることに、改めて
気づかされる思いがしました。

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