2018年9月19日水曜日

国立国際美術館「プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画」を観て

プーシキン美術館が所蔵する、17世紀から20世紀のフランスの風景画65点を展観
する展覧会です。

まずフランス近代風景画と限定してこれだけ充実した展覧会が企画出来る、プーシ
キン美術館のコレクションの質の高さに、改めて驚かされます。

さて風景画というジャンルが、宗教画や肖像画などに比べてかなり遅れて確立された
という影響もあって、17世紀から20世紀までを年代順に括って観て行くと、風景画の
変遷や発展がよく見えるように感じられました。

つまり17世紀の風景画は、かつて風景というものが他の主題の背景に過ぎなかった
名残を残すように、同じ風景画にしても神話の場面や人々の生活、廃墟などを描き
込むことによって、物語性を伴うように表現されているように感じられます。

しかし時代を下るにつれて風景そのものの美しさや抒情が、画家をキャンパスに向か
わせる動機となって行くように思われます。更には近代化の進展が、都市風景を描く
風景画を生み出し、都市郊外を愛でる絵画を生み出して行きます。そして20世紀の
風景画の多くは、画家本人のフィルターを介した独自の作品になって行くように感じ
られました。

各時代に魅力的な風景画が沢山ありましたが、今回とくに私の印象に残ったのは、
20世紀の風景画からアンリ・ルソーの「馬を襲うジャガー」でした。

この独特の絵画は、画家が植物園の情景などから想を得て、想像力だけで熱帯の
ジャングルを描き上げたといいます。そのためか現代のイラストや絵本の世界に
通じるような、一見鮮やかな原色を使った動きの少ない平面的な描写でありながら、
神話的世界のような重厚感、奥行きがあり、一度見ると脳裏に焼き付く作品です。

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