2018年9月21日金曜日

「福岡伸一の動的平衡 「過剰さは効率を凌駕する」」を読んで

2018年9月20日付け朝日新聞朝刊「福岡伸一の動的平衡」では、「過剰さは効率を
凌駕する」と題して、生命現象が〝想定外〟の事態に対していかに対処しているか
ということについて、語っています。

まず免疫システムにおいては、病原細菌、新奇なウイルス、化学物質などの侵入に
対処するため、DNAのランダムな組み換えと積極的な変化によって、百万通り以上
の抗体を準備し、この中のどれかが役に立てばいいという態勢を取っているといい
ます。

またヒトの脳は生まれた後、神経細胞同士がさかんに連合して積極的にシナプス
結合を形成し、過剰なネットワークを作って環境からの入力を待ち構え、よく使われ
たシナプスは残り、使われなかったシナプスは消え、10歳ごろまでにそのシナプス
は半減するということです。

途方もない年月の激しい環境変化に耐え、一見効率が最優先であるかのように思
われる生命現象が、贅沢ともいえる過剰な準備を前提にこのようなシステムを作り
上げていることに、驚かされます。

しかし考えてみれば自然界においても、生命の多様性の上に良好な環境が作られ
ていて、その一つのピースが欠けると環境破壊が進むということも、よく知られて
いる事実です。潤沢に準備して想定外に備えることによって得られる柔軟性は、
生命現象持続の重要なキーワードなのでしょう。

ヒトの脳の幼年期における必要以上のシナプスの準備も、より複雑な環境に順応
出来る能力を醸成するためであることは明らかですし、無駄に見えるものが実は
無駄ではない、ということなのでしょう。

我々現代人は、経済活動などにおいて効率化が至上の価値のようについつい考え
勝ちですが、当の私たちの体内の生命を持続するシステムが、ある意味過剰さを
信奉しているという現実を知って、少し考え方を改めるべきなのかもしれません。

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