2018年3月19日月曜日

京都文化博物館「絵画の愉しみ画家のたくらみ」を観て

今回の京都文化博物館の展覧会は、今まで目にしたこともなかった日本近代絵画
の名品にも出会え、また絵画の楽しみ方も示唆してくれる、肩の力を抜いて親密な
気分で絵と向き合える企画でした。

また本展はその所蔵品、寄託品で構成されているのですが、ウッドワン美術館の
存在は、これまで全く知りませんでした。この美術館は、広島県廿日市発祥の
総合木質建材メーカー、株式会社ウッドワンの所蔵美術品を公開するために、
当地に設けられた美術館ということで、今回展示されている絵画を観ると、派手
ではありませんが、滋味溢れる作品を収蔵していて、一度是非訪れてみたくなり
ました。

先般尋ねたMIHO MUSEUM、アサヒビール大山崎山荘美術館などのような、
まだまだ私の知らない地方のこじんまりとした個性的な美術館を探し出して、訪問
していきたい願望に駆られました。

さて本展は、テーマ別に違う画家、あるいは年代を変えた同一の画家の作品を
数点並べ、それらを比較しながら観ることによって、絵画の楽しみ方を分かりやすく
示そうとする展覧会です。

まず冒頭、日本画、洋画の比較のコーナーでは、初見の日本洋画の先駆者
高橋由一の「官軍が火を人吉に放つ図」、日本画家橋本雅邦の「紅葉白水図」が
目に止まりました。

日本画、洋画という言葉が明治時代以降、それ以前からの日本の伝統的な様式の
絵画の総称としての日本画、他方西洋から導入された油彩を中心とする様式として
の洋画、というように規定されたものであることは知っていましたが、その初期の
両者を並べて観ると、この頃から現在に至る二つの流れの影響関係も含め、美術
における海外文化の移入ということについて、大いに考えさせられました。

その文脈では日本における裸体画の受容史、日本画、洋画それぞれの分野に
おける裸婦の描き方の相違、あるいは画家の個性による違いなども興味深く感じ
ました。

絵画の比較という楽しみ方だけではなく、個別に絵画史における名作と言っていい
作品も散見され、黒田清輝「木かげ」、岸田劉生「毛糸肩掛せる麗子肖像」などは、
その画家の絵画の魅力を堪能させてくれました。

他にも佐伯祐三、荻須高徳という、よく似たパリの街角を描く二人の画家の絵の
個性の違い、早熟の天才青木繁の早過ぎる晩年の絵画から滲み出る哀切感など、
文字通り愉しみの多い展覧会でした。
                                  2017年10月15日記

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