2018年3月26日月曜日

日本テレビ系水曜ドラマ『anone』を観終えて

最近テレビドラマを観るようになって、このシーズンも数本を観ました。その中でも
『anone』が一番印象に残ったので、少し感想を記してみたいと思います。

このドラマは広瀬すず主演、偽札づくりに巻き込まれていく疑似家族を描く物語です。
今なぜ、最近はあまり話題にならない偽札づくりを扱うのか、ということが少し引っ掛
かりますが、偽札を作ろうとするのが疑似家族であるという二重のフェイク感が、現代
の時代の気分を映しているのかも知れません。

偽造紙幣製造の拠点となり、疑似家族が暮らす場ともなる、林田亜乃音の元印刷工場
兼住居には、本来は縁のない廣瀬演じるハリカを始め、舵、るい子が同居して、
かりそめの家族を演じることになります。それに対して、偽札づくりを主導する工場の
元従業員中世古理市が、亜乃音の親族とは係わりを持ちながら、疑似家族の仲間入り
をしないところも、象徴的です。

中世古はかつて自分の起業したIT企業を倒産させるなど、この社会に対して憤懣を
持ち、更には完璧な偽札を作ることが可能であるという確信が、是が非でも本物と
変わらない偽札を作って世間を見返したいという願望を生み出して、どんな手段を
使ってでも亜乃音たちを巻き込み、作業を強行することになります。

偽札づくりが露見したラストで、彼がハリカに自首をうながされた時、亜乃音に共謀を
承諾させるきっかけとなった、彼女の義理の孫の過失を彼が自ら引き受けようとした
行動は、彼なりの彼女への罪滅ぼし、それまでの自分の行為に対する良心の呵責で
あると、私は感じました。

この疑似家族の中で偽札づくりを介して、孤独な少女ハリカは家族の温もりと、人を
愛することの幸せを感得しますが、例えかりそめの環境の中でも、人を信じるということ
の本当の意味を理解することが出来たことが、彼女の成長をうながしたのだと、感じ
ました。

ハリカが愛用するスケートボードの裏面に描かれた、パウル・クレーの純真さを象徴
する天使の図柄が、彼女の傷付きやすい無垢な心を映し出すようで、とても印象に残り
ました。

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