2016年5月23日月曜日

京都高島屋グランドホール「第45回日本伝統工芸近畿展」を観て

今回の伝統工芸展も、仕事とつながりがあり、興味も持っている染織を中心に
観て来ました。

今展では人間国宝や看板作家の作品に、さすがの充実した技量を感じさせ
られました。

森口邦彦の友禅訪問着「こもれび」は、淡いグレー地に一面にあられを散らした
ような撒きのりと線の表現だけで、従来の幾何学的で硬質なイメージを超えた
微妙で柔らかな表情を醸し出し、華やぎのある作品になっていると、感じました。

福田喜重の駒塩瀬名古屋帯「繫」は、非常に細かい点のつながりで表現された
単色の刺繍の不規則な網目状の空間の要所要所が、これも微妙な色合いの
色糸の刺繍の点のつながりで埋められて、繊細な中にもリズミカルで、詩情の
あふれる作品になっています。

村上良子の紬織着物「若葉の斜景」は、肩の辺りが微妙にぼかされている、
全体としてはやや生成りがかったクリーム系の地色の裾に、派手に主張は
しないが、何とも言えず美しい緑色の模様が斜めに織り込まれて、平板に
なりがちな紬織の着物に、たおやかさと奥行きを生み出しています。また
草木染の色の豊饒さも、堪能させてくれる作品です。

これらの作家は、従来の仕事によってすでに高い評価を受けて来ていますが、
時代の状況も踏まえ、常により優れた作品を作り出そうとする姿勢に、強い
感銘を受けました。

0 件のコメント:

コメントを投稿