2016年5月25日水曜日

「京都国際写真祭」堀川御池ギャラリー会場1階の展示を観て

新聞でこの写真祭の告知を目にして興味を覚えたので、堀川御池ギャラリー
会場に足を向けてみました。

1階では、フランスの写真家ティエリー・ブェットによる「うまれて1時間のぼくたち」
が開催されています。

この展示では、純白の円筒状にしつらえられた展示スペースに入り口をくぐって
入ると、円筒の内壁に、大きな正方形のフォーマットをとった、生後1時間以内の
表情豊かな新生児のアップのポートレート写真が一面にぐるりと並び、一瞬
母体の子宮内に迷い込んでしまったような錯覚に襲われます。

生まれて1時間以内というのに驚くほど表情が多種多様で、何かその子が
大人になった後の性格や風貌が想像されるような、あるいは、世界の色々な
人間が色々な場面で作る表情が、これらの赤ちゃんの表情の内に出尽くして
いるような感慨を抱きました。

人間なんて所詮、生まれてから大人になるまでそんなに成長しないものなのだ、
とも思われますし、また新生児が母体から生まれ出て来るということは、一つの
衝撃的な出来事で、赤ちゃんもその子なりに試練を乗り越えて、ワンランク
成長したのだ、とも言えるのではないでしょうか?

またここに写し取られている新生児は、全て人工授精で命を授かったということで、
生命というものが人間によって操作される可能性が広がる時代にあって、やはり
生命の尊厳は一線を超えては侵しがたいものであること、しかし人が自らの幸福の
追求、つまりは自分の子供を持ちたいという基本的な欲求を、どこまで叶える
ことが出来るのかということとの折り合いを、どこでつけるべきかということなど、
複雑で、デリケートな問題について、この展示は多くを語り掛けているように感じ
ました。

0 件のコメント:

コメントを投稿