2016年3月28日月曜日

加賀玉糸紬の白生地について

先日ある博物館より依頼を受けた、展示物の制作を請け負う業者の方が、
出土した古代の剣を展示するにあたり、それに付着していた絹生地の断片を
復元するための広幅の白生地を探しているということで、三浦清商店にご来店
されました。

お問い合わせの電話の時点では、糸の太い、なおかつフラットな生地ということ
なので、塩瀬の広幅をお勧めしていましたが、ご来店時に付着した布の写真を
見せて頂くと、塩瀬のように目が詰まった織組織のものではなく、もっと素朴な
表情を有する生地でした。

それで以前に、古代の染色を研究する専門家の方が、東大寺創建にまつわる
記念祭が奈良で開催されるに合わせて、当時の衣装を復元するために、この
生地が現存する織物の中では往時のものによく似ていると言って、当店の
白山紬をご購入頂いたことを思い出して、白山紬よりさらに織表面に表情が
ある玉糸紬をお勧めしました。

白山紬は現在では、経糸が生糸、緯糸が双子の蚕の繭から作る玉糸で
織られていて、緯糸に太さの不均一な糸が使用されるので、織物表面の横
だけに節がある生地となっています。

それに対して玉糸紬は、経糸、緯糸に玉糸を使用しているので、それだけ
織るのに手間はかかりますが、縦横に節があって、表情のある生地になります。
かつての白山紬はこの玉糸紬に近いもので、それゆえ特に現在でも玉糸紬の
風合いを好まれる染色家の方があって、当店ではこの紬の広幅を別織して
います。

今回のお客さまも、結局この紬を使って頂くことになって、満足げな表情を
しておられたので、私としてもほっとしました。

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