ここのところ急に寒くなって来たので、思い切って店に長火鉢を出して
みました。私の記憶をたどると、およそ30年ぶりぐらいでしょうか。
最近家でも炭の効用を見直して、魚や肉を焼く時に時々使っているので、
店にも出してみたらお客さまにも喜んでいただけるのではないかと、考え
たのです。
思い起こすと、かつては冬になると長火鉢が毎年用意されて、あの頃は
今ほど暖房器具も整っていないで、店内の空気もひんやりとした中に、
いかにも寒そうな様子の訪問客が店先の引き戸を開けて入ってこられて、
いすに座って長火鉢に手をかざしながら、商売や世間話が弾むという
光景がよく見られたように記憶します。火鉢に五徳を据え付けてやかんで
湯を沸かしたり、炭から直接タバコに火を着ける仕草も思い出されます。
さて店に火鉢を置いてみると、まず気付いたのは燃える炭が発する香り
でした。懐かしいような何とも言えない、ほのかではあるがこうばしい
芳香が鼻をくすぐります。これはすっかり忘れていたことの、嬉しい再発見
でした。
またまだ真冬ではないので、他の暖房器具は使っていない中で炭火を
いれると、店の空気がじんわりと温まりました。この暖かさも、ガス、電気の
暖房とは違って、皮膚が昔から覚えているような郷愁を誘う温もりと、感じ
られました。
来店されたお客さまにも好評なので、しばらく続けたいと思います。
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