2015年10月12日月曜日

京都高島屋グランドホール「第62回日本伝統工芸展京都展」を観て

本展に出品されている工芸家の方より招待券を頂き、伝統工芸展を
久しぶりに観て来ました。以前は入場料が無料でしたが近年有料となり、
かえって盛況ということです。

仕事に関係の深い染織を中心に作品を観て行くと、東日本大震災から
まだ日も浅い時期に見た時には、作家の方々も、この大きな災厄を
創作活動の中でどう受け止めるべきか、戸惑っておられるところが
あったのだろうと推測されるほどに、あえて華美さを控えめにしたり、
目立たないように技巧を凝らしたりというような、作為的な部分が目に
付くきらいがありました。

しかし今回観てみると、多くの出品作で作家自身が、工芸における
創作行為とは何かということを、自問自答しながら作品を丹念に作り
上げているような、伝統工芸らしい落ち着きが戻って来たように感じ
られて、好ましい心持でじっくりと鑑賞することが出来ました。

染織に話を戻すと、友禅染の作品群は多色の華やかな色使いや、
大胆なあるいは、シックで洗練された意匠などで、随分と目を楽しま
せてくれますが、現代的な価値観を意識してか、伝統的な意匠を
用いたものがほとんど見当たらないのが、寂しく感じられます。現代の
社会に伝統意匠を適合させることの難しさは、十分理解出来ますが、
敢えてそういう困難な道に挑戦する作家が現れてくれたらと、私は
思います。

染織のパートに刺繍作品が2点しかないのも、一般の人々の習い事と
しての刺繍の広がりを思うと、物足りなく感じます。ただ、各地の
織物技術、染色技法など、そのままにしておけば失われるかもしれない
伝統工芸品を、このような多くの鑑賞者が目にする場で、展示する
ことの意義も、本展を観て改めて感じさせられました。



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