2014年10月26日日曜日

滋賀県立美術館「世界の名画と出会う」-ピカソ、マチス、ウォーホルの版画からーを観て

この美術館の開館30周年を記念して開催された、所蔵の版画作品を
展観する館蔵名品展の第一弾です。

本展の冒頭の展示作品は、船越桂「Quiet Summer」です。船越は人物の
木彫作品で世界的に評価される作家ですが、版画においても意欲的な
創作活動を続けていて、この作品は木彫で注目され始めた初期の
時期の作品です。

白をベースにしたモノトーンの中で、着用するジャケットの深い黒が
鮮やかに浮かび上がり、肖像の頭部を取り囲むような多数のほの黒い
かすれは、この人物を粘土などでこねあげて造形した痕跡のように
感じられます。平面でありながら、彫刻家の制作らしい立体的な作品に
仕上がっています。

ピカソの版画作品は、キュビスムの立体を解体した幾何学的な描写に、
新聞の印刷文字のコピーを加えることによって、作品にリアリティーを
獲得するための工夫を見せ、マチスのそれは、色彩豊かな油彩画とは
違って、線描ゆえのデッサン力の素晴らしさ、造形感覚の豊かさを
示します。

現代美術に移って、ポップ・アートのウォーホルは、ロゴだけが違い、
他は寸分たがわぬキャンベルスープ缶の作品をずらっと並べることに
より、大量消費時代に伴う無機的な社会を告発し、彩色のそれぞれ
違うマリリン・モンローの顔写真を縦、横に配列することによって、
現代社会におけるシンボルというもののはかなさ、虚構性を明らかに
します。

多様な展開を遂げる版画の魅力を目配りよく示す、好企画でした。

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