2014年9月13日土曜日

漱石「こころ」における、Kの死について

2014年9月12日付け朝日新聞朝刊、夏目漱石「こころ」100年ぶり連載
先生の遺書(102)に、Kの死に直面した先生の衝撃と心の揺れが
記されています。

「私が進もうか止そうかと考えて、ともかくも翌日まで待とうと決心したのは
土曜の晩でした。ところがその晩に、Kは自殺して死んでしまったのです。
私は今でもその光景を思い出すと慄然とします。」

「その時私の受けた第一の感じは、Kから突然恋の自白を聞かされた時の
それとほぼ同じでした。私の眼は彼の部屋の中を一目見るや否や、
あたかも硝子で作った義眼のように、動く能力を失いました。」

私は、前回この小説を読んだ時にはまったく思い浮かばなかったのですが、
学卒後就職して間もなくのある出来事を思い出しました。

新入社員研修を終えてとある地方の支店に配属された時、少し遅れて
もう一人の新人がその支店にやってきました。

小さい支店で新入社員は私と二人だけ、上司は私たちを競わせて、
一人前の販売員にしようとしました。

数か月後、私がとにもかくにも見習い販売員として数件の得意先を
任された時、もう一方の新人の彼は、まだ自信がないと言って一人で
職務を行うことを躊躇していました。そうして間もなく、突然彼は自殺して
しまったのです。

青天の霹靂でした。その時の驚愕は今でも鮮やかに思い出します。原因が
わからないだけに、私の存在が彼の死の引き金になったのではないかと、
ずいぶん悩みました。後に私がその会社を辞める遠因の一つにもなった
くらいです。

身近な若い人の自裁はそれほど衝撃的で、ましてや親友Kに対して
後ろめたいところのある先生の罪の意識は、いかばかりでしょう。

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