2014年9月26日金曜日

漱石「こころ」の再連載が終わって

2014年9月25日付け朝日新聞朝刊、夏目漱石「こころ」100年ぶり連載
先生の遺書(110)で、この小説は終わりました。

「こころ」をこういう形で再読して、新たな感興も生まれ、また前回よりも
深く味わうことが出来たと感じました。

その要因として、一つはあらかたの筋を知り、それをなぞることが出来た
事、もう一つは、前回は文庫本で一気に読み通したものが、今回は
新聞連載という形で一回づつを丁寧に味わうことが出来た事を、
上げられると思います。

今回再読して新たに感じ、気づいたことは、先生のKや御嬢さん、
奥さんとの接し方は、肝心なことを伝える言葉の欠如という点で、今日の
意思疎通が重視される社会の慣行にあっては欠点が際立ち、事実、
先生のこの沈黙が重大な悲劇を生みだしたのですが、先生がお嬢さん
との結婚後も、一方的に周りの人間を不幸にする独りよがりで、だめな
人間かというと、それは違うのではないかと思いました。

つまり先生は、自分の中に人間の原罪としての利己心を見出し、愛する
妻の純真を自己犠牲をもって守ろうとしたのではないか、と感じたのです。

自らの罪を認識し、贖罪の意識を貫き通すことは、並の意志では不可能
でしょう。それほど芯の通った人間であるという意味で、先生は私たちの
良心を常に鼓舞してくれる存在であると感じました。

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