2014年7月2日水曜日

漱石「こころ」の中の、状況による人の言葉と心の機微

朝日新聞2014年7月2日付け朝刊、漱石「こころ」先生の遺書52回の中の
「母は父のために箒で背中をどやされた時の事などを話した。今まで
何遍もそれを聞かされた私と兄は、何時もとはまるで違った気分で、
母の言葉を父の記念のように耳へ受け入れた。」という文章に感銘を
受けました。

私の経験からも、年配の女性が、良きにつけ悪しきにつけ、永年連れ添った
夫が過去に自分に対して示した態度、その行為を繰り返し身内に語る
ことがあります。

それは一種、親愛の情を示すことなのしょうが、聞かされている方は
「またか!」と、少なからずうんざりします。

しかし、「こころ」の中の私と兄の場合のように、当の父が死を間近に
しているような特別な時には、その受け取り方も違います。

母の口癖は、息子たちを感傷的にさせ、切なく、懐かしい気分に浸らせる
のです。

人は日々、日常の繰り返しの中で、同じ意味の言葉を、状況に応じた
様々なニュアンスや抑揚を含んだ話し言葉として語ります。

時々に受け取り手の感じ方も違うということが、人のコミニケーションを
より豊かにしているのでしょう。

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