2014年7月9日水曜日

山田風太郎著「同日同刻ー太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日」を読んで

作家山田風太郎が、太平洋戦争開戦の一日、昭和16年12月8日と
終戦までの十五日、昭和20年8月1日から15日までの敵味方の
指導者、軍人、民衆の姿を膨大な記録の中から時系列に沿って
再現、個々の事象の総体から、この未曾有の戦争はいかなる
ものであり、その渦中に人間は、どのように生きたかを明らかに
しようと試みた作品です。

本作品は、開戦時、終戦時の人々の姿をただ羅列するものですが、
作者の取捨選択、並べる順序の決定の妙もあって、当時の人間の
息吹が生々しく伝わり、時代の様相が重層的、立体的に浮かび
上がります。

開戦時の記録で私の目を引いたのは、多くの日本国民が熱狂する
姿で、世相を反映する文学作家たちの述懐も、一部反戦的な
考え方を示すものはあっても、多数は開戦に高揚していたという
事実です。

これらの記録から見えてくるのは、アメリカとの戦争突入による、
我が国の鬱屈した状態からの一気の解放の気分です。最後は
有無を言わず、戦争になだれ込んだ様子がうかがえます。

終戦前の十五日間は、日本が最早弓おれ矢つき、米軍の
継続される情け容赦ない攻撃、ソ連の突如の参戦という状況の
中で、軍幹部の一部が狂気じみた徹底抗戦を唱え、クーデターが
画策され、一方満州では関東軍が住民を置き去りにして撤退、
民間人に多数の犠牲者が出ます。

満蒙開拓民の自決、原爆、空襲の被害の惨状には、心が痛みます。

国会で憲法解釈の変更による、集団的自衛権の行使が議題に
登る今日、非常事態に際して人は、往々にして判断を誤るものである
ということを、重々肝に銘ずべきでしょう。

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