2020年2月10日付け朝日新聞夕刊では、上記のテーマで甲南女子大学の米澤泉
教授とファッション誌編集者、軍地彩弓さんが、現代の若者のファッション指向に
ついて語っています。無論洋装が念頭にあるのですが、和装にも通じると感じられ
たので、私も興味深く読みました。
二人の論を要約すると、最近の学生はファッションや化粧への関心が低い。着飾る
ことや、体に窮屈なものは遠ざける傾向にあり、今は快適に生活することの方が
優先されている。社会がカジュアル化して週末のお出かけがなくなり、儀式、葬式
の簡略化で式服も不要となるなど、TPOの消失も大きい。
また、スマホの普及によって、流行の作り方や雑誌の役割が変わるなど、ファッショ
ン誌も変化した。以前は雑誌が新しい価値観を提供して読者をあおった部分もあっ
たが、今は夢を与えるのではなくハウツーを教えるものになっている。これまでと逆
に、メディアが読者を追いかけるようになった。
更には、若い世代は現実のものに執着しない。自分が価値を見出すものであれば、
仮想のものに率先して代価を支払う。持つことが悪という意識が生まれている。
しかし一方、最近若い世代が、信条や思想が一貫しているブランドである、日本の
ヨウジヤマモト、イッセイミヤケ、コムデギャルソンに、改めて興味を抱いていること
からも推察されるように、人とな何か、着るとは何かという根源的な問いがなされて
いるのではないか。つまり、ファッションが嫌いになったわけではなく、本質的な
ところに戻りつつある、と思われる。それゆえに若者たちが、時代に関係なくいい
ものはいいと受け入れるようになり、同時に環境意識や正しさに賢く帰結していけ
ば、新たなファッション界の隆盛が訪れるかもしれない。
以上です。多少楽観的な結論になっていて、現実がそのようにうまく運ぶかは甚だ
疑問ですが、若者の嗜好、購買行動などには、なるほどとうなずける部分が多いと
感じました。
翻って、一定以下の世代での和装離が言われだしてからもかなりの年月が経過し、
もはやほぼ全世代で和装離れが進んでいますが、確かに若い人たちの中に伝統的
な価値観に興味を持つ人も生まれて来ています。我々和装業に携わる者が、そう
いう人々が失望しないように導いて行くことも、私たちの大切な役割だと思います。
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