2020年3月16日月曜日

泉屋博古館「モネからはじまる 住友洋画物語」を観て

新型コロナウイルス禍により、各地の美術館、博物館で、展覧会の延期、中止が
相次ぐ中で、この会場の企画展は予定通り開催されたので、早速行って来ました。

元々京都市街の東端、東山連峰の樹木の緑にもほど近い、閑静な住宅地に位置
し、建物自体も広い敷地の中に余裕を持ってレイアウトされた、主に住友家の個人
コレクションを中心に展観する展示施設で、いつ訪れても適度の人数の鑑賞者が
静かに展示作品に見入っているというイメージがあるので、今回のような騒動の
折も、抵抗感なく訪れることが出来ました。

さて本展は、開館60周年記念名品展と題して、文明開化以降の住友家の近代化、
繁栄に力を尽くした、第15代当主・住友吉左衛門友純とその長男寛一、弟の第16
代当主友成が蒐集した、洋画44点を展観する展覧会です。

まずそのコレクションは、友純が明治30年に欧米視察を行った折に、パリで購入
した2点のモネ作品から始まり、この視察で日本の産業の近代化と同時に文化
芸術の振興の必要性を痛感した彼が、黎明期の洋画家浅井忠、鹿子木孟郎、
黒田清輝などを支援し、彼らのアドバイスにより、あるいは、つながりのある画家
たちの作品を購入することによって、形成されて行ったということです。

それゆえ、友純の絵画蒐集には、西洋の優れた作品を日本に紹介するという側面
と、日本の西洋画を振興するために、上記の黎明期の画家たちや、それに続く
青年画家たちの作品を購入するという側面があったようです。


彼のコレクション作品では、最初のモネの2点は勿論、ジャン=ポール・ローランス
の歴史画の大作、ギョーム・セニャックの魅力的な女神像、他方浅井の水彩作品
や鹿子木の大作、藤島武二の女性像が印象的でした。


寛一は岸田劉生と親交が深く、個性的な劉生の麗子像などが、ひときわ異彩を放っ
ていました。他方友成の収集品は、ブラマンク、ルオー、ルノアール、シャガール
など、小品ながら味わい深いものが多く、また私が今まで知らなかった日本人画家
の作品も、じっくりと観ると内からその良さがにじみ出てくるような佳品が、見受け
られました。


全体を観て、単にコレクター個人の鑑賞のためということではなく、日本に洋画文化
を根付かせたいという使命感や、芸術に対する真摯な想い、節度ある鑑賞姿勢が
伝わってくるような、爽やかさを感じました。

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