2020年2月3日月曜日

福田美術館「美人のすべて」を観て

オープン以来ずっと行きたいと思っていた、福田美術館に行って来ました。

場所は、観光名所嵐山の保津川沿い渡月橋の近くで、風光明媚なところです。今回
は利用しませんでしたが、美術館のカフェからの渡月橋の眺めが良いそうです。

今回の展覧会は「美人のすべて」という題名で、上村松園の絵画17点をはじめ、全て
館蔵品の美人画60点で構成されています。展示スペースでは、作品のすぐ間近に
作品と鑑賞者を隔てるガラスが設置されるという風に見せる工夫がされていて、今回
であれば観る者は、描かれた美人の髪形や髪の毛のはえ際、着物の柄やかんざし、
襟などの小物の細部まで、鑑賞することが出来ます。

そういうわけで、全てが美人画の60点を丹念に観て行くと、色々なことを感じ取る
ことが出来ました。

まず、美人画というものは、単に美人を描くということだけが目的ではなくて、その
美人の装いや仕草、最小限の舞台設定、例えばいっぴきの蝶、一片の花びらや雪、
あるいは実際には描かれていない月や雨を介して、季節や情緒、その場の気分を
も描き出そうとするものであるということ。このことは、展示されている松園の一連
の作品を通して、感じることが出来ました。

松園の作品では他にも興味深いものがあって、まず「浴後美人図」(うっかり題名を
失念したので、これで合っていると思うのですが)では、浴後の若い裸体の女性が
身づくろいする姿が描かれていながら、不思議と色香というものが感じられません。
これは作者があくまで女性の風俗を描くことに徹していて、色香を描くことは眼中に
なかったから、という解説がなされていましたが、この画家の気性がうかがえて、
面白く感じました。

更には、初公開という「雪女」では、近松門左衛門の浄瑠璃「雪女五枚羽子板」が
題材にされていて、画法は松園の作品には珍しく、雪女そのものの姿は着色せず
地のまま残して、周囲を墨で縁取ることによって淡く浮かび上がらせるという技法
が使われていますが、題材そのものはこの画家の一貫して取り組んだ、気高い
女性の系譜に連なるということで、彼女の一徹さを興味深く感じました。

その他にも、東西を代表する画家の美人画の比較、珍しい木島櫻谷の美人画など
見どころが沢山あって、すっかり堪能することが出来ました。

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