2020年2月14日金曜日

兵庫県立美術館「ゴッホ展」を観て

本展は、ゴッホが画家になろうと決意してから、短い生涯を閉じるまでの約10年間
を、影響を受けた画家たちと彼自身の作品で跡付ける、展覧会です。

それにしても、彼が画家として活動したのがたった10年余りであることに、まず驚か
されます。その短い期間で、後世の人々に深い感動を与える、何と素晴らしい幾多
の絵画を生み出したことか!

そして短い画業ゆえに当然のことながら、彼の画風は先を行く同時代の画家たち
の影響を受けて、劇的に変遷して行きます。この展覧会では、その核として、ハーグ
派と印象派の画家たちの、彼の絵画スタイルへの影響について取り上げています。

先のハーグ派は、オランダのハーグ市を中心に活動した画家のグループで、ゴッホ
はその派のマウフェ、マリス、イスラエルスなどに触発されて、画家として歩み始める
のですが、そのグループの特徴は、オランダの伝統的な絵画の流れをくむ、写実的
で色を抑えた穏やかな色調で農村の風景や風俗を描くもので、その時代の彼の
代表作には、「ジャガイモを食べる人々」があります。

私は実は、ハーグ派やこの時代のゴッホの絵画の知識が乏しいので、今展では
そこを中心に展示作品を観ようと思って会場に来たのですが、実際にこの派の画家
の絵や彼の作品にも見るべきものがありながら、やはり抑えた色彩の絵を観続けて
いるうちに、色に焦がれたとでも言いましょうか、彼がその後パリに出て最初に最も
影響を受けた画家モンティセリの絵画を目にして、思わず引き込まれてしまいました。

そこから、当時パリで最も輝いていた綺羅星のような印象派の画家ピサロ、モネ、
ルノアール、後期印象派の画家セザンヌ、ゴーギャン、シニャックたちとの交友、
絵画の影響関係が生まれ、彼の作品も鮮やかな色を得て、これこそゴッホというよう
に劇的に変化します。

この時代の彼の絵画は、実際に観ると正に圧巻、アルル時代の作品では、彼の
喜びや幸福感が絵全体からほとばしり出ていますし、サン=レミ時代の絵画には、
その輝く色彩に付け加えて、うねるような筆触が、彼の葛藤する心と深い思索の
せめぎ合いを滲み出させているように、感じられます。私はしばし、それらの作品
の前に呆然と佇まざるを得ませんでした。

これほど多くのゴッホの絵画を観て、本当に満ち足りた時間を過ごすことが出来ま
した。

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