2020年2月24日月曜日

鷲田清一「折々のことば」1722を読んで

2020年2月7日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1722では
経済学史家・堂目卓生の著書『アダム・スミス』から、次のことばが取り上げられてい
ます。

   経済を発展させるのは「弱い人」、あるいは
   私たちの中にある、「弱さ」である。

そう、今でこそ私たちは、経済というとすぐに、弱肉強食の新自由主義を連想します
が、本来の経済は、弱い立場の(困っている)人間がスムーズに欲求を充たす方法
を探る目的で、生まれたはずです。

私は大学の経済学部出身ですが、最初に習ったのは、需要と供給の法則、つまり
需要(人が求めるもの)の量と供給(人に提供するもの)の量は均衡する、という
経済の原則です。これは、人間の欲求に対して、必要な量のものを生産するため
の目安を導き出す方法、とも言えます。

私たちが商売をすることについても、父から聞かされてきたところによると、第二次
世界大戦の敗戦後、最初商う品物が極端に欠乏していて、配給でしか確保すること
が出来ず、配給を受けることが許可される商店は、住民の投票によって決定された
ということで、かつての得意先、ご近所の人々が、私たちの店に投票をしていただき、
商売を続けることが出来た、ということが本当に有難かった、ということでした。

人々が求める商品が極度に不足している中で、その品を取り次ぐ店として認めて
頂き、その貴重な商品を求める人々に出来るだけ公正に届けるという商行為が、
使命感のある仕事であったことが、想像されます。

あるいは経済が、人間の心の弱さ、猜疑心や虚栄心、嫉妬心などの思惑で動く
側面もあるでしょう。その一端は、地価や株式相場の異常な高騰、バブルの崩壊
などの狂騒的な現象に、現れています。

いずれにしても、人間とは本来弱い存在で、それゆえに私たちのような零細な店は、
原点に返って、真摯に謙虚に商売を営まなければならないと、改めて感じます。

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