2019年10月1日火曜日

鷲田清一「折々のことば」1586を読んで

2019年9月20日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1586では
米国の建築家ルイス・カーンの『ルイス・カーン建築論集』から、次のことばが取り上げ
られています。

   ひとりの人間のもっとも優れた価値は、その
   人が所有権を要求できない領域にある

ここでは、自分の発想、作品とこだわるところには真の創造性はなく、先に自分の中に
あってつねに蠢いているもっと古いもの、そこにこそ創造性の原点はある、という意味
を語っているそうです。

確かに、何かを始める時に、その原点を大切にするということは、必要でしょう。しかし
私はこのことばを、人という存在の、人間としての価値を指し示す言葉として受け取り、
感銘を受けました。

つまり人の本当の価値は、社会的地位やどれだけ財産を持っているか、ということで
決まるのではなく、その人の内面に宿る人間性によって判断されるべきだと語ってい
ると、解釈したのです。

こういう尺度で人間を評価することの重要性は、かねてからよく語られて来たことでは
ありますが、言うは易く行うは難しというか、現実には世間の評価ということも相まって、
私たちはついつい、社会的成功者を称賛する傾向にあります。

しかし必ずしも、社会的に成功した人の人間性が優れている訳ではなく、逆に市井に
埋もれてつつましく暮らしている人の中に、得てして高潔な人はいるものだと、思い
ます。

大切なことは、世俗的な評価に惑わされず、人間性が優れた人を見極められる目を
持つこと。そして出来れば、そのような人にあやかれる人間に成るべく、研鑽を積む
こと、だと感じます。

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