2019年8月7日水曜日

是枝裕和監督映画「万引き家族」を観て

是枝監督の昨年度カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作「万引き家族」が、テレビ
地上波で初放映されるということで、早速録画して観ました。

本当の血のつながった家族ではない家族の、束の間の共同生活を描いたドラマです
が、家族、親子、兄弟の絆とは何か、深く問いかけて来る映画です。

私としては、家族をテーマにした数々の是枝作品の中でも、「誰も知らない」に一番
近いものを感じました。

それというのも、疑似家族間の関係を描く中で、それぞれの関係に味わい深く、印象
に残るところはありますが、祥太、ゆりという二人の幼い子供に関わる部分が、最も
強く訴えかけて来るものがあると、感じられたからです。やはり家族の幸不幸という
ものは、その家の子供の様子を見れば分かる、ということでしょうか。

この疑似家庭が崩壊した後、世間の常識的な目で見れば、この似非家族は悪意に
満ちた前科者の男と内縁の妻が、自分たちの都合で作り上げた家族で、老婆や
子供たちは犠牲者ですが、実際にこの映画を観て来た者にとっては、この家族は
肉親によって構成された本物の家族の中でも、幸福な家族です。

そしてそのことが端的に表れているのは、上記の子供たちが万引きという犯罪に
加担させられているにも関わらず、愛情を持って家族の大人に接してもらっている
からであり、一人の人間として尊重されているからです。

更には、途中で亡くなり、年金詐取のために家の床下に埋められることになる老婆
は、生前も血のつながらない他のメンバーを自宅に無償で住まわせ、なけなしの
年金も生活費の当てにされる気の毒な存在ですが、実は彼女もこの家族の中で
年長者として尊重され、結果として孤独死を免れたことになります。

この映画は、色々入り組んだ逆説的な設定で特異な家族を描き、一言でことの善悪
の結論を導き出すことはできませんが、その淡々とした描写、作中の人物たちが
時折見せる幸福そうな表情は、確実に、今の日本の家族にとって本当に必要なもの
は何かということを示してくれていると、感じました。

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