2019年8月15日木曜日

鷲田清一「折々のことば」1533を読んで

2019年7月27日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1533では
彫刻家・詩人、飯田善國の『ピカソ』から、次のことばが取り上げられています。

   十歳で どんな大人より上手に 描けた
   子供の ように描けるまで一生 かかった

ピカソの展覧会を観に行くと、彼の代表的な作品はキュビスムを初め、写実的な
絵画ではありませんが、その少年期の見たものをありのままに描いた絵は、余り
に完成度が高いので、しばしば驚かされます。

つまりピカソは早熟にして、年若くで人並以上の絵画の技術を習得して、それでは
飽き足りず、その絵画のスタイルを終生変革して行った、ということでしょう。

その次々に編み出す様式に、記念碑的な名作が生まれ、後世の絵画に多大な
影響を及ぼしたのですから、正に天才と言って過言ではありません。

しかし上記のことばにも記されているように、彼を絵画の革新へと突き動かした
ものは、アフリカの仮面彫刻やギリシャ神話など、プリミティブな力であったことは、
周知の事実です。

原始時代の洞窟壁画が示すように、もともと絵を描くという行為は、人間が原初
から持っていた自身の内面を表現したいという欲求であり、生きた痕跡を残す
ことへの希求なのでしょう。

そのような絵を描く行為が、時代が下るに連れて洗練され、色々な理由をまとわり
つかせて、ついには職業としての画家を生み出して行きますが、その近代における
一人の大成者であるピカソが、創作の原点としての欲求に忠実であったということ
は、図らずして芸術の本質を、私たちに示してくれているのではないでしょうか?

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