2018年12月31日月曜日

語り猪田彰郎「イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由」を読んで

私が二十代の頃から通い、また私たちの店で正月に、日頃のご愛顧に感謝してお客
さまに配るチョコレート菓子も用意してもらっている、イノダコーヒ三条店の初代名物
店長・猪田彰郎さんの本が出たので、早速読んでみました。

私が若い時には、この特徴的な円形カウンターがある、重厚な設えのコーヒー店の
椅子に座るのは少し背伸びした感じで、多様な客で賑わい、カウンター内ではスタッフ
たちがコーヒーを淹れるために忙しそうに立ち働いているのに独特の居心地の良さが
あり、その雰囲気を醸し出す象徴とも言える猪田店長が、若い客でも分け隔てなく
愛想よく迎えてくださったものでした。

引退された猪田さんにお目にかからなくなって久しいのですが、この本を手にすると
かつての懐かしい思い出が蘇って来ました。

1章は実践的な美味しいコーヒーの淹れ方、写真も豊富で、分かりやすくまとめられて
います。2章は猪田さんがコーヒー店の店長として店を盛り立て、長く客に愛される
雰囲気を生み出すために心掛けたこと、接客法など、気持ちの持ち方、対人面の
あり方について。単にコーヒー店に限らず、私も同じく商店を営む者として、大いに学ぶ
ところがあると、感じました。

3章は猪田彰郎さんが15歳から働き始めたイノダコーヒ創業の経緯と、38歳で開店と
同時に店長を任された三条店の成り立ちと歴史について。コーヒー文化を京都に
根付かせるために、奮闘する様子が伝わって来ます。

また高倉健をはじめ映画関係者、文化人との交流の様子も印象的で、それらの有名人
が訪れることによって、イノダコーヒのイメージが形作られていったことがうかがわれ
ます。

私自身このコーヒー店には京都らしく落ち着いた気分と、西洋風のハイカラさの見事に
融和した雰囲気があり、それが大きな魅力であると感じて来ましたが、その佇まいが
生まれた秘密の一端を垣間見た思いがしました。

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