2018年12月25日火曜日

鷲田清一「折々のことば」1304を読んで

2018年12月2日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1304では
探検家でノンフィクション作家・角幡唯介の探検記『極夜行』から、次のことばが取り
上げられています。

  ぞくぞくした。この永続する不安感は探検が
  うまくいっている証拠なのである。

終日太陽を拝むことのない冬の北極圏を単独で旅した探検家は、死の瀬戸際で
踏みとどまり再び陽光を目にした時、原初的な歓びが体から湧き起こって来るのを
感じます。

文明社会の分厚い鎧に守られた現代人は、人間本来の生のあり方をすっかり忘却
してしまっているのでしょう。秘境と呼ばれるような文明の影響が及ばない地に単独
で降り立った探検家だけが、このような生の本質に直接触れることが出来るのかも
知れません。

そんな覚悟の探検家のノンフィクション作品を読む私たちは、冒険行為の現実の成り
行きと同時に、人間が根源的に持つ野性的な感性や、そこから導き出された始原の
精神的営為を追体験することが出来るようにも思われます。

上記の言葉とそれに添えられた鷲田の注釈を読んで、私はすぐに『極夜行』を読む
ことに決めました。

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