2018年12月7日金曜日

大森立嗣監督作品映画「日日是好日」を観て

今年亡くなった樹木希林の出演作ということで、映画館で観ました。茶道の入門編
として、相応しい映画だと感じました。私たちの店には、お茶に係わる方がお客さま
としてお見えになることがありますが、その方々が時折お仲間で語らっておられる
茶道の魅力の一端が、私たち門外漢にも少し理解出来たように感じられる、作品
でした。

キャストから触れると、武田先生の樹木希林は着物の着こなしから佇まいまで、
さすがの存在感。着こなしについては、自分の持つ華美ではなく、趣味の良い着物
を大切に着まわす高齢の女性が、清潔さを失わないように、しかし肩肘張らず
ゆったりと心地よさげに着物を着ている姿が秀逸でした。

武田先生の人間性も、着物の装いと相通じるように、性格は飾らず、お茶の指導は
むやみに押し付けず、それでいて伝えるべきことは的確に伝えるというスタンスで、
弟子への気遣い、愛情も、過不足なくにじみ出ていて、こんな先生なら一度指導を
受けてみたいと、感じさせます。

まだ若いにも関わらず、抑えた感情表現が得意な、主演の黒木華の不器用な典子
との師弟の関係も、付かず離れずの、しかし心の底では典子が先生を慕っている
様子がうまく描き出されていると、感じました。

茶道というものについて、私がこの映画から感じ取ったのは、形から入り、それが
無意識でも出来るようになったところから、味わいが生まれるという部分。現代の
教育ではまず自分の頭で考えるということが重要視されるので、私たちはついつい
理論や方法論に囚われてしまいがちですが、元来人間の行為には外的な要因
との関わりの中で自然に培われて来たものが多くあるはずで、現代人にとっての
茶道の魅力の大きい部分に、そのことを思い起こさせる役割があるのではないか
と、この映画を観て感じました。

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