2018年7月20日金曜日

是枝裕和監督作品「海街diary」を観て

「そして父になる」と前後しましたが、テレビ放映された是枝監督の「海街diary」を
録画で観ました。家族の絆をじっくりと描く、是枝監督らしい落ち着いた映画でした。

公開当時話題になったという、香田三姉妹、プラス異母妹が、綾瀬はるか、長澤
まさみ、夏帆、広瀬すずという豪華キャスト。しかし是枝監督は、人気女優の
表面的な華やかさをはぎ取り、それぞれの内面からにじみ出る本来の魅力を
見事に引き出す演出を心がけている、と感じました。

それが証拠に女優たちの演技がとても自然で、物語の核でもある本当の姉妹の
ような雰囲気が醸し出されていて、脇を固める同じく手練れの俳優陣とも相まって、
一見淡々としているけれど実は濃密な、家族の物語が画面に現出されています。

父には逃げられ、母にも捨てられてなお旧家を守る三姉妹、皆を束ねるのは
綾瀬演じる長女の幸ですが、三人の中で一番父親の記憶を有し、愛憎も深い
はずの彼女が、父と父を自分から奪った女性の忘れ形見である浅野すずを、
その家に引き入れると決断するところに、すずの容姿や挙措から発散される、
血のつながりというものの持つ吸引力を感じました。

一方すずは、孤独の中ですがりつく思いで三姉妹の下に身を寄せますが、三人
から父親を奪った母の子であるという後ろめたさから、本当の妹のように接して
くれる三人の優しさに触れても、最後のところでなかなか、心を開くことが出来
ません。

映画の終盤、鎌倉の海を望む高台で、幸は、「お父さんのバカ!」と叫び、すずは、
「お母さんのバカ!」と叫んだ時、二人は本当の家族としての姉妹になったのだ、
と確信しました。

海にたたずむ四姉妹のラストシーンは、仲の良い家族がそろう幸福と、同時に
人生においてはそのような満ち足りた時は長続きしないことを暗示しているようで、
いとおしく、切ない気持ちに囚われました。





0 件のコメント:

コメントを投稿