2018年2月9日金曜日

鷲田清一「折々のことば」1013を読んで

2018年2月6日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1013では
作家須賀敦子の名随想「コルシア書店の仲間たち」から、次のことばが取り上げ
られています。

 私たちはすこしずつ、孤独が、かつて私たちを恐れさせたような荒野でないことを
 知った

若い頃に感じた孤独は、圧倒的にさみしさや、絶望を伴うものでした。何故なら、
その当時この感情には必ず、焦燥や不安、現状への不満が付随していたからだと、
今は思います。

しかしいつの頃からか、落ち着いた、満ち足りた心の状態の中での孤独は、決して
悪いものではないと、感じるようになりました。そのような孤独は、私たちを内省や
他の人の心を思いやる気持ちに誘い、更には何か考えをまとめなければならない
情況などで、心に浮かんだ断片に一つの形を与えるのを静かに後押ししてくれると、
思うからです。

勿論今でも、時としてさみしさを伴う孤独感に苛まれることはあります。でも幸いにも
それは一過性で、現在の私にとって孤独は親しみ深いもの、それに包まれていると
居心地の良いものと感じられることが多いと、実感しています。

それは私が、ある程度の諦念を持って自分の人生を眺めるようになったからかも
知れませんが、長い年月の中で、様々な経験がそんな達観を私にもたらしたのだ
とも感じます。

ある時期私は、須賀敦子の自らの充実したイタリア時代を振り返る珠玉の随想本
のシリーズを、まるで渇きを癒すように読みふけったことがあります。きっとその経験
も、今日の私の孤独との対し方に影響を与えていると、上記のことばを読んで改めて
気づかされました。



 

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