2017年5月12日金曜日

「京都国際写真祭2017」吉田亮人展、ラファエル・ダラポルタ展などを観て

今回は、「京都国際写真祭2017」の元・新風館会場と京都文化博物館別館会場で、
吉田亮人、スーザン・バーネットとラファエル・ダラポルタ、ルネ・グローブリの作品を
観て来ました。

まず元・新風館会場に着くと、仮囲い壁面に野外展示されたバーネットの作品が
迎えてくれます。これは、今回の写真祭のテーマ「LOVE]をモチーフにした、Tシャツを
着た人々の一人づつの後ろ姿を写し撮った写真作品で、私たちが常日頃抱くイメージ
からは、後ろ姿が個性を表すという認識が抜け落ちがちですが、このそれぞれの人が
自分の思いを表現したTシャツをまとい、思い思いのポーズを取る写真を観ていると、
後ろ姿が人の生き方を雄弁に物語ることを、改めて気づかせてくれます。

会場内奥では、吉田亮人の年下の従兄弟と、生まれた時から共に生活した祖母との
日常の姿を記録した写真作品が展示されています。年の離れた二人が仲睦まじく
手をつないで買い物をし、この孫息子が祖母にスプーンで食事を与え、お風呂に
入れてあげる姿は、微笑ましくも人と人の絆の確かな温もりを感じさせてくれますが、
現実はその孫が突然失踪して、自ら命を絶ったことを既に知っている私たち鑑賞者は、
作品を観て行く内に、次第に切ない思いに囚われます。最後の小さく区切られた
コーナーでは、失踪後一年余りして従兄弟の死体が発見された、現場周辺の樹木に
覆われた景色が写真で再現され展示されて、観る者が彼の最後の想いに、想像を
巡らせざるを得ない仕掛けになっています。人の心の不可解さ、生きるということの
悲しみを感じさせられました。

京都文化博物館別館会場のダラポルタの、世界最古の洞窟壁画が残るといわれる
ショーヴェ洞窟の内部を、大規模な4Kによる超高画質モニターで再現した映像作品は、
息を飲むような迫力で観る者を圧倒します。この大自然の相貌を眼前にすると、人類
なんてほんのちっぽけなものに感じられますが、その壁面に確かに刻印された古代の
人間の残した壁画という足跡は、目の前に映し出された時私たちをほっとさせると
同時に、彼らが長い年月連綿と受け継ぐことになる、生き続けるという不屈の意志の
形象とも感じられて、勇気を与えられました。

グローブリの自らの新婚旅行での、妻との濃密な関係を綴ったエロチックでしかも洒脱
な写真作品は、彼の地の芸術の洗練を否応なく感じさせて、私は羨望の眼差しを向け
ざるを得ませんでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿