2017年5月5日金曜日

「京都国際写真祭2017」荒木経惟展を観て

今回は、京都五山の一つの禅宗寺院、建仁寺塔頭両足院が会場の荒木経惟ー
机上の愛ー展を観て来ました。

建仁寺は祇園の大和大路に面し、私は正月によく、商売の神様京都ゑびす神社に
初詣に行ったので、その向かい側にある建仁寺の門の前は通ることがあったの
ですが、実際に境内に入るのは初めてで、どのような所か期待を持って、会場に
向かいました。

折しも境内には堂々とした法堂周りに牡丹が咲きほこり、寺院の古色を帯びた
落ち着いた雰囲気の中に、上品なあでやかさを添えています。

横目で見ながらしばらく進むと、石垣の上に連なる美し白壁の塀が目に入り、
塀沿いに折れて少し石段を上がったところに、目指す両足院がありました。

会場の座敷に足を踏み入れた時、まず目に飛び込んで来たのは、庭に面する
ガラス戸から射し込む溢れんばかりの光、それから、荒木自筆と思われる力強い
筆致の「机上の愛」の掛け軸、写真作品は畳の上低い位置に設えられた、簡素で
瀟洒な白木作りのケースに納められて、覗き込むように鑑賞することになります。

作品は題名が示す通り、机上に並べられた裸体の人形、怪獣や爬虫類のおもちゃ、
それに切り花や鉢植えの植物を、色々に組み合わせて写し取った写真です。

いわば静物写真とも言えるのですが、そこは荒木経惟の作品だけあって、一筋縄
では行きません。机に並べられたそれらのものたちが、まるで命を持っているかの
ようになまめかしく、エロスさえ感じさせます。それはこの写真家が被写体に対して、
生身の人体と同じ愛を感じ取っているということではないでしょうか?

そう感じた時、私は先日観たメイプルソープの写真を、すぐに思い浮かべました。
彼の作品では、肉体をオブジェのように構成しながら、そこには確かな美しさと愛が
表現されていました。それに対して荒木は、物質の中に生身のエロスを見出して
いるのです。

洋の東西、写真家の感性によって、美や愛が様々に描き出されることを、目の
当たりにしたような気がしました。

作品展を鑑賞後、目の前に広がる美しい回遊式庭園を巡って、満ち足りた思いで、
会場を後にしました。

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