2017年1月13日金曜日

改組新第3回「日展」を観て

今年も恒例の日展を観て来ました。何時ものように、特に私が興味を持つ、
工芸美術の中の染色、日本画を中心に観て回りました。

染色では、馴染の作家の作品に多くお目にかかりましたが、それらの出展作も随分と
数が絞られて来て、激選されているという印象を受けました。その分馴染の作家の
作品も、例年の技法及び表現方法に新たな発想や苦心の跡が認められる作品が多く
存在し、見ごたえのある展観と感じました。

反面、新しく選ばれて展示された新進の作家の作品は少なく、世間一般に言われ、
また私たちも感じているように、染色美術の退潮ということを実感させられました。

昨年三浦景生回顧展を観て、染色美術の素晴らしさを再認識した私としては、この
美術分野を取り巻く環境の厳しさは、その周辺で仕事をさせて頂いている者として
ひしひしと感じながら、この部門をけん引するスター性を有する作家の出現と、次代を
担う新たな才能の誕生を切に願う思いを、改めて強くしました。

日本画については単に私の好みというだけで、気楽な気分で鑑賞することが出来るの
ですが、やはり従来重鎮と言われた高名な画家の多くが物故されて、会場を巡っても
少し物足りなさを感じました。その中で、中路融人「淡紅垂咲く石庭」はひときわ光彩を
放つさすがの作品で、見ごたえがありました。

日本画部門は相対的に幻想的な作品が多く見受けられ、現代的で洗練された佇まい
が目立ちますが、反面、線の厳しさや優美さを前提とする格調高い日本画らしい作品が
少なく、敢えて日本画として表現する意味を感じさせない作品も見られました。私は
もっと日本画然とした優れた画を、多く観たいと思いました。

他方少数ではあっても、新しい日本画を生み出そうと志す実験的な作品もあって、
伊東正次「野仏図」、岩田壮平「ばんえい」に、私はそんな気概を嗅ぎ取り、好ましく思い
ました。

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