2014年4月2日水曜日

映画「ペコロスの母に会いに行く」を観て

長崎在住の漫画家 岡野雄一の認知症の老母介護を題材とした、
ユーモア溢れるエッセイ漫画の映画化作品です。

私自身も80歳を越える母と同居し、老人介護は他人事ではない
切実な問題です。

バツイチの主人公雄一は、認知症の兆候が出始めた母を抱えながら、
会社に勤めつつ、漫画を描き、音楽活動に勤しむと、多忙な日々を
送っていますが、母の症状が進み、ケアマネジャーの勧めに従って、
彼女を介護施設に入れる決意をします。

母の施設入所までは、彼女の認知症を疎ましく思っていた雄一ですが、
施設で介護職員、他の入居者やその家族と知り合い、何より、母と
少し距離を置いて接することが出来るようになって、次第に、認知症も
悪いことばかりではないと、感じるようになります。

認知症を患った人は、未来に向かって生きるより、過去をもう一度
生き直すことを選択しているのかもしれません。しかし、それは一概に
退行とは言えないのではないでしょうか?

人は時の流れの中で、否応なく現実に押し流されながら、気がかりや
悔恨を残しつつ生きて行く。

生きることに忙しいうちは、それらの諸事を頭の片隅に押しやって、
すっかり忘れていますが、認知症を患って、脳が最早、未来について
考えることを放棄した時、過去の懸念や痛恨事が一挙に頭をもたげて
来るのでしょう。

それら諸々を、もう一度記憶の中に辿り直し、自分なりの納得を得た時、
その人の心は安らぎに満たされるのではないでしょうか。

介護は決して、きれいごとではありません。しかし、介護される人の心に
少しでも寄り添うことが出来た時、この絶望的に見える状況に、かすかな
光明はさすのかもしれません。

この作品は、そんなことを私たちに、気付かせてくれます。

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