2018年11月23日金曜日

堂本印象美術館「徳岡神泉ー深遠なる精神世界ー」を観て

徳岡神泉の名は知っていても、作品はほとんど観たことがありませんでした。それで
本展に足を運ぼうと思ったのですが、この展覧会には私にとってもう一つの楽しみが
あって、それは会場が堂本印象美術館であるということです。

衣笠の立命館大学のほど近く、観光道路とも呼ばれる一条通に面し、その印象自ら
のデザインというユニークな外観が目を引きます。ここも是非訪れてみたいと思って
いたところでした。

美術館の中に入ると、内部も外観にたがわぬ斬新な造りで、内壁、柱、ドアの取っ手
などにも装飾が施され、印象の絵画、造形物が配置良く並べられて、建物全体が
一つの美術作品であるかのような趣きがあります。彼の美術家としての多彩さ、我が
国の画家には珍しいスケールの大きさに、改めて感服しました。

さて徳岡神泉の絵画は、題材はほぼ植物や風景といった身近なものに限られ、しかも
対象の中に没入してその精髄を引き出すような表現方法を用いているため、極めて
私的で、一見華やかさがなく地味な印象を受けますが、じっと見入っていると画面の底
から知らず知らずのうちに、高い精神性や詩情が浮かび上がって来て、忘れがたい
余韻を残します。

その作品が画家自らの心のフィルターをを通して描き上げられた証拠に、描く対象が
一個の蕪であっても、苅田の切り株の情景であっても、雲から覗く富士の高嶺であって
も、それらは皆同列の存在感や佇まいを持って、観る者に語り掛けて来るように感じ
られます。

この世に存在する全てのものに対する畏怖、慈しみの念、その底に秘められた真理を
も解き明かそうとする飽くなき探求心、神泉を絵画制作に突き動かさせた心の働きは
確かに一つ一つの結晶となって、私たちの眼前に差し出されていると感じました。

久々に現代日本画の原点と呼ぶにふさわしい、画業を観ることが出来た展覧会でした。

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