2018年11月14日水曜日

ジャン=ジャック・ルソー著「社会契約論」を読んで

兼ねてよりルソーの著作を何か読みたいと思っていたのですが、題名を聞いたこと
があったので、本書を手に取りました。ところが読み始めると、民主主義、共和制に
ついて語る深遠な社会思想の書で、たたみかけるような理知的な論述を私が一体
どこまで理解出来たのか、定かではありません。しかしせっかく読んだので、自分
なりの感想を記してみたいと思います。

著者はギリシャから始めてヨーロッパの政治体制の歴史を紐解き、分析しながら、
来たるべき社会の理想の政治体制として民主主義的共和制を挙げますが、まず
本書が近代的な共和制などいまだ実現の目途も立たなかった、1762年に刊行された
ことが言うまでもなく重要です。それゆえに民主主義の指針ともみなされ、フランス
革命にも多大な影響を与えたのでしょう。

さて現代の日本に生きる私としては、本書を読んで、遠くギリシャから始まる民主的
な社会の歴史に、ヨーロッパの政治の奥深さを感じます。それが例え奴隷制度に
立脚するものであっても、少なくともその頃に、独立した対等な市民の協議によって
政治が動かされていたという事実が、第二次世界大戦後与えられる形で民主主義が
定着した我々日本人と根本から違います。

ではヨーロッパ発祥の民主主義、共和制の近代に相応しい発展形とはいかなるもの
であるべきか?本書はルソーが考えるその制度を示す書でもありますが、彼は人間
が自然状態に近い自由と平等を保持した社会を実現するために、共同体の各構成員
が一旦持っていた権利を共同体に返して、その代わりに身体と財産を守ってもらう
ような「社会契約」を結び、共同体の全体及び各構成員の保存と幸福を目指す「一般
意志」を実現する制度、と考えていたようです。

もしそうであるならば、これを実現するためには共同体(国家)と各構成員(個人)は
深い信頼関係で結ばれていなければならないことになるでしょう。それが現実には
到底実現不可能な理想的社会であるとしても、政治は本来理想を語るべきものである
とするなら、彼の論稿が民主主義のバイブルとなったことは十分に理解できます。

振り返って日本の国家と私たち一人ひとりは、民主主義のいまだ発展途上の状態に
あるばかりではなく、根本として相互の幾ばくかの信頼関係を構築することがまず先決
であると、本書を読んで改めて強く感じました。

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