2018年8月9日木曜日

「福岡伸一の動的平衡「生命かつ消えかつ結びて」」を読んで

2018年8月2日付け朝日新聞朝刊「福岡伸一の動的平衡」では、「生命かつ消え
かつ結びて」と題して、ノーベル賞学者大隅良典氏のオートファジー研究の話から、
生命現象にとって細胞の合成以上に分解が重要であるということを踏まえ、鴨長明
の「方丈記」の冒頭の記述が、筆者が提唱する「生命の動的平衡」を見事に言い
表しているということについて記しています。

仏教における曼荼羅が、宇宙の構造を先験的に明示しているといわれるように、
先人の叡智は、現代人には測り知れない深いものがあると、感じさせられることが
あります。

鴨長明の「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶ
うたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし」という有名な文章
も、すぐに「般若心経」を想起させ、日本人の無常観を示すと共に、まさに先人から
受け継がれた叡智を詩的に表現した文章なのでしょう。

そのように考えると、私たち日本人はいにしえより、自然に寄り添う心象を持って
日々の生活を営んで来たように推察されます。むしろ近代以降の科学技術の発達
や資本主義的価値観の浸透によって、本来の叡智が失われたと、言えるのかも
知れません。

しかし、上記のオートファジーの研究や、動的平衡の認知度の向上など、最先端の
生命科学の研究が、生命活動の本質を解き明かすにつれて、再び人類の叡智が
思い起こされつつあるようにも感じます。

そして筆者自身も語るように、科学と芸術の幸福な関係を取り戻すことが、人類の
将来にとって真に有益な学術の向上に、つながるのかも知れません。

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